リポート 頼れる身寄りのない高齢者支援
更新日:3 日前
6月の国会で、改正社会福祉法などが成立し、親族など頼れる身寄りがいない高齢者を日常生活、入退院、死後の事務まで一貫して支援する仕組みができました。国が身寄りのない高齢者支援の仕組みを作ったのですから、「画期的な制度」と拍手したいところですが、課題は山積。手放しでは喜べないようです。その内容、実施に向けた課題、制度ができた背景などを整理してみました。まず、制度の概要は以下の通りです。
📌 制度の基本情報
① 実施主体~都道府県社会福祉協議会に義務付け、業務は委託を受けた各市区町村社協が担う。民間事業者、社会福祉法人の参入も想定 制度の基本情報
② 実施時期~2028年6月までの開始を目指す
③ 対象~(頼れる身寄りがいない高齢者など)+(判断能力が不十分な人)
④ 利用料~有料だが、十分な資力のない人は無料または低額で利用できるよう配慮
📌 主な支援内容(三つの柱)
① 日常生活支援…福祉サービスの利用援助、日常的な金銭管理サービス、書類などの預かりサービス(従来の日常生活自立支援事業と同様)
② 入院・入所など手続き支援…入退院などの手続き支援、緊急連絡先の提供、費用の支払い代行
③ 死後事務支援…葬儀・納骨、家財処分の契約手続き支援、行政官庁への届け出
家族の役割を担い、支援範囲を拡大
以上が新制度の概略ですが、こうした支援は家族・親族が担ってきた役割です。しかし、家族関係変化で、こうした課題への対応が大きくクローズアップされてきました。頼る身寄りのない高齢者に対する生前、死後の支援は、民間事業者による「高齢者等終身サポート事業」が先行してきました。しかし、かなりの費用が必要になるため、経済力のない人も利用できる仕組みが必要になったのも新制度の背景の一つです。
一方、公的な支援としては、判断能力が衰えた人を対象に全国の社会福祉協議会が実施している金銭管理・福祉サービス利用援助など日常生活自立支援事業(日自)があります。今回できた仕組みは、この事業を拡大。対象に頼れる身寄りがいない高齢者を加えるとともに、支援内容を日常支援のほか入院・入所支援、死後事務まで広げたのが大きな特徴です。

(写真は秋の雲。記事の内容とは関係ありません)
財源と人手確保に課題
改正法は成立しましたが、詳細設計はこれからです。支援の具体的な細目や、利用料金の体系、無料・低額で利用できる資力の条件などは実施までに示される見通しで、課題、難題は山積です。
そもそも、「頼れる身寄りがいない」とはどういう状態かという明確な定義がありません。ガイドラインなどで示すのか、実施主体の判断に任せるのか、まだはっきりしていません。
最大の課題は、財源と人手の確保です。低額、無料になる資力のない人とは住民税非課税世帯を念頭にしているようですが、それ相当の財源措置が必要です。社会保障費の伸びが問題となる中では、財源確保は容易ではなく、さまざまなサービスも限定的なものになりそうです。
そして、介護、福祉の現場は慢性的な人材不足に悩まされています。現在、社会福祉協議会が実施している日常生活自立支援事業でも、全国的に対応する人員不足や待機者も多いことが指摘されています。これに、身寄りのない高齢者支援が加われば、現場の一層の負担増が懸念されます。
高齢者独居率が高い北海道
頼れる身寄りのない高齢者支援は、北海道にとっても、大変重要な課題です。北海道の高齢者の独居率(2025年の都道府県別推計)は、東京都、大阪府、京都府、鹿児島県などに次いで全国9番目。東日本では東北、北陸各県に比べ北海道は際立って高いのです。理由ははっきりしませんが、伝統的な家制度に対するこだわりの低さなどが指摘されています。
そして、特に過疎に悩む道内の町村で、高齢率が高いことを考慮すると、多数の一人暮らし高齢者が広い道内に、点在していることをうかがわせます。
身寄りがないといえば、札幌で火葬しても引き取り手のない遺骨が急増しています。2024年度には768件。2007年度(81件)の10倍近くに達しています。768件と言えば、1日平均2件です。問題の深刻さの一端がうかがえます。札幌のような人口200万人近い都市と、道内の広大な過疎地。それぞれ地域の特性に応じた弾力的な対応が求められています。
未婚の人が急増、全世代の課題に
一方、65以上の一人暮らし高齢者は今後も全国的に増えるとともに、未婚の人が急増する見込みです。2020年から2050年の間に、高齢単独世帯に占める未婚の人の割合は、男性が33・7%から59・7%へ、女性は11・9%から30・2%となり、近親者ら頼れる身寄りのない高齢者が増えていきそうです。もちろん、結婚についての個人の選択は尊重されなければいけませんが、身寄りのない問題は、現在の高齢者だけでなく、50代の団塊ジュニア世代など比較的若い世代にとっても、いずれ直面する現実なのです。
今回の高齢者支援は、まずは最低限のセーフティーネットで出発しそうですが、高齢者だけでなく、全世代が直面する国民的な課題として、議論を広げるべきでしょう。
(注)高齢者の一人暮らし関連は、国立社会保障・人口問題研究所 日本の世帯数の将来推計(全国、都道府県)2024年推計より。
札幌市の引き取り手のない遺骨の件数は、第2次札幌市火葬場・墓地に関する運営計画(2026年)より



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