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「全身全霊はもう…」 その② 夫源病(ふげんびょう)

  • 執筆者の写真: masahiko fukuda
    masahiko fukuda
  • 7月20日
  • 読了時間: 3分

退職後の夫 妻のストレスに

 「男の人生、これからが勝負」…。こんな言葉が印象に残っています。勤続40年。65歳で退職した時に、ある年長の方からメールです。組織を離れても、ちゃんと目標を持って元気で張りのある生活を送れるのかどうか。本当に勝負だと自分に言い聞かせています。とはいっても、「老後はのんびりしても、ええやないか」。そんな天使か悪魔のささやきと葛藤しながらの話ですが…。

 

 前回のコラムで、全身全霊で長時間働くことに警鐘を鳴らした気鋭の文芸評論家、三宅香帆さんのベストセラーを紹介。男性サラリーマンが長時間労働で、退職後の人生設計を考える余裕をなくす懸念を指摘しました。「行くところがない」、「会う人がいない」、「やることがない」。そんな夫の存在が妻のストレスになるが「夫源病」です。

 

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誕生日に一輪の花を

 夫源病の名付けの親は、大阪樟蔭女子大教授だった石蔵文信さんです。10年近く前に、大阪のご自宅でインタビューをお願いしたことがあります。石蔵さんは男性の更年期外来を開設した際、その妻たちも更年期障害に悩んでいることに気付いたそうです。女性の更年期障害といえば頭痛、めまい、肩こり、動悸、全身の痛みなどが知られています。その原因の多くは男性の何気ない言動や行動だそうです。例えば、家の中のあら捜しをする、妻の外出先をチェックする、友人関係に干渉するといった具合。男性に求められる心がけは、定年退職後のプランを早めに作る、退職後も社会参加する、妻の誕生日や結婚記念日を忘れない…。「記念日当日に贈る一輪の花は、3日後のダイヤに勝る」。石倉さんの作った格言です。

 

 石蔵さんはとても気さくな方で、質問には何でも率直に答えてくれました。石蔵さんは私と同年代ですが、残念ながら2022年に亡くなりました。ご冥福をお祈りします。


夫婦二人で長い時間は…

 夫源病は別名「主人在宅ストレス症候群」とも言われます。その背景は何でしょうか。妻が家にいる夫の存在にストレスを感じるのは、夫が在職中、比較的自由な時間を過ごしてきた事情もあるでしょう。 そして、妻の家事にもうるさく口を出すような男性は、管理職が長くその習慣が抜けない場合もあるようです。男性は仕事、女性は家事という長く続いた役割分担の習慣から、退職後も男性が家事を手伝わない場合は、妻の不満が高まることも指摘されています。

 

 では、夫源病を防ぐ妙案は。いろいろな方の意見をうかがって現実的な対応の一つだと感じたのは、「夫婦二人であまり長い時間を過ごさない」。まあ、身も蓋もないような言い方ですが、そのためには、男性が家で長時間、テレビを見ながらごろ寝をするわけにはいかない。趣味、ちょっとした仕事、ボランティア、自己実現のための活動など、生きがいを見つけることが必要になります。

 

 冒頭で紹介した「男の人生、これからが勝負」という言葉。自戒をこめて、さまざまな意味で奥が深いのです。

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